FinGo新人営業の北爪です。
決済業界初心者ということで、noteを書くハードルを少し下げられるようにと、先輩たちとは別シリーズでnoteを書かせていただいておりましたが、このシリーズをいったん終わりにしようと思います。
メインタイトルでは、より興味がそそられるような記事を書いていけたらなと思っておりますが、少し拙い記事があったら、それはきっと私なので、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
初日からを少し思い返すと、専門用語が分からず状況をイメージできなかったところから、現場で経験値を少しづつ貯めさせていただき、まだまだレベル上げの最中ですが、今はなんとか会議の内容をその場で理解できるようになってきました。
ちょっとずつ分かることが増えてくると、街中の決済の仕組みや端末にも目が行くようになってきますね。
先週の休みに買い物で街を歩いていた時、近所の駐車場精算機が見たことがない形で(今までじっくり見ることが少なかったからかもですが)、思わず写真に撮っていました。
これからは、ちょっとずつ街で気になったことや、生活の中での決済に関する疑問とかも記事にしていけたらいいなと思っています!
前置きが長くなりましたが、今回は私も少しゆかりがある、埼玉県の取り組みに注目して書いてみたいと思います。
キャッシュレス決済というと、スマートフォンを取り出して支払う。
私たちが普段イメージするのは、そんな「支払いの瞬間」ではないでしょうか。
ところが最近、その決済の役割が少しずつ変わっています。
その一例が、さいたま市の「さいたま市みんなのアプリ」です。
2026年9月、さいたま市は、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を展開するLuup、そして「さいたま市みんなのアプリ」を運営するつなぐと連携協定を締結しました。
連携内容には、LUUPで使えるクーポンをデジタル地域通貨「さいコイン」と交換できる仕組みや、LUUPアプリとの相互送客、市内移動の活性化などが含まれています。
つまり、地域の決済アプリに「移動」が入ってきたわけです。
一見すると、「決済とLUUPが連携した」という話に見えます。
でも、さいコインの仕組みまで見ていくと、この連携はもう少し大きな意味を持っていることが分かります。
地域のキャッシュレス化は、単に現金をデジタルに置き換えることではない。
むしろ、
「地域の中で、人とお金をどう動かすか」
を設計するための仕組みに近づいているのではないでしょうか。
今回の連携で注目したいのは、単にLUUPがさいたま市に導入されることではありません。
さいたま市は「さいたま市みんなのアプリ」を軸に、LUUPでの市内移動を活性化し、それによる地域振興を進める方針を示しています。
さらに、デジタル地域通貨によるキャッシュレス決済の普及や、官民連携による持続可能な経済活動についても共同施策を検討するとしています。
実際、今回の連携では、「さいコイン」と交換できるLUUPさいたま限定クーポンも用意されます。
ここで一つ疑問が出てきます。
なぜ「決済」と「移動」を一緒にするのでしょうか。
その答えを考えるには、まず「さいコイン」がどんな決済サービスなのかを見る必要があります。
さいコインは、「さいたま市みんなのアプリ」の中で提供されているデジタル地域通貨です。
指定の銀行口座やクレジットカード、セブン銀行ATM、市内郵便局の窓口などからチャージでき、市内の加盟店で利用できます。
2026年度は、さいコインをチャージすると、チャージ額の3%分の「たまポン」が付与される仕組みも用意されています。現金チャージの場合は2%です。
ここだけを見ると、「地域版のキャッシュレス決済」に見えるかもしれません。
しかし、さいコインには通常の決済サービスとは少し違う特徴があります。
それは、決済を地域政策と組み合わせられることです。
さいたま市では、デジタル地域通貨を使った行政給付も行っています。
市によれば、行政給付をデジタル地域通貨で支給することで、市外での消費に使われることを防ぎ、地域内でお金を循環させることを目指しています。
さらに、給付制度ごとに利用できる加盟店や対象商品・サービスを設定できる「行政ポイント」や「たまポン」を活用することもできます。
ここに、地域通貨の特徴があります。
一般的なキャッシュレス決済では、
「どう支払うか」
が中心です。
地域通貨では、それに加えて、
「どこで使われるか」
まで設計できる。
これは、決済を単なる支払い手段ではなく、地域経済政策の一部として見る考え方です。
さいコインとセットで提供されている「たまポン」には、さらに面白い仕組みがあります。
たまポンは、さいコインのチャージなどで貯まるポイントで、1ポイント=1円として利用できます。
一方で、健康づくり、ボランティア、地域イベントへの参加など、地域にとって良い行動に対して「地域貢献ポイント」として付与する仕組みもあります。
つまり、
「買い物をしたからポイントが貯まる」
だけではありません。
「地域にとって望ましい行動をしたからポイントが付く」
という設計が可能です。
ここまで来ると、決済サービスというより、少し違うものに見えてきます。
例えば、
健康イベントに参加する
↓
たまポンが付与される
↓
地域の加盟店で使う
↓
店舗の売上になる
という流れができます。
行政からの給付でも同じです。
給付する
↓
地域内で使ってもらう
↓
地域の店舗に売上が入る
↓
地域内で消費が循環する
という仕組みを作れる。
決済を使って、人の行動と地域のお金の流れを設計する。
これが地域通貨の面白いところです。
ここで、今回の記事の本題に入ります。
なぜ自治体が決済を持つ必要があるのでしょうか。
クレジットカードやQRコード決済がすでに普及しているなかで、わざわざ自治体独自の決済基盤を持つ理由は、単純な「支払いの便利さ」だけでは説明しにくい。
自治体にとって重要なのは、決済そのものよりも、決済を通じて地域の経済活動に関われることです。
例えば、
といった設計ができます。
さいたま市は、実際にデジタル地域通貨を行政給付や地域貢献ポイントに活用しています。
これは、一般的な決済事業者が持つ目的とは少し違います。
決済事業者にとっては、決済件数や加盟店、ユーザーの利用頻度などが重要になります。
一方、自治体にとっては、
地域内の消費をどう増やすか。
市民にどんな行動を促すか。
行政サービスと地域経済をどうつなぐか。
といった政策目的があります。
だからこそ、自治体が決済を持つ意味が出てきます。
ここで、今回のLUUPとの連携に戻ります。
もし地域アプリが決済だけを目的としているなら、LUUPとの連携は少し不思議です。
しかし、
「地域の中で人を動かし、消費を生み出すための基盤」
と考えると、かなり自然です。
例えば、
駅から少し離れた場所へLUUPで移動する。
その途中で地域の店舗を利用する。
そこでさいコインを使う。
クーポンをきっかけに、普段なら行かなかった店舗に足を運ぶ。
こうした行動が積み重なれば、決済は単なる「支払いの手段」ではなくなります。
移動と消費をつなぐ接点になります。
今回の連携でも、さいたま市はLUUPとの連携を通じて、市内移動の活性化と地域振興を進めるとしています。
つまり、
移動する
↓
街を回遊する
↓
店舗を利用する
↓
地域通貨を使う
という導線を、同じ地域アプリを軸に作ろうとしているわけです。
この変化は、店舗にとっても無関係ではありません。
これまでキャッシュレス決済を導入する理由は、
「お客さんが使いたい決済手段に対応するため」
という側面が大きかったと思います。
もちろん、これは今後も重要です。
ただ、地域通貨の場合はそれだけではありません。
さいたま市は加盟店に対して、デジタル地域通貨の導入費用と月額固定費を0円とし、決済手数料のみ発生する仕組みを案内しています。
また、利用者が店舗に設置した二次元コードを読み取る方式を採用しており、店舗側はコードを設置することで決済を受け付けられます。
店舗側からすると、単に「さいコインで支払える店になる」というだけではありません。
地域アプリの中で、
決済
+
クーポン
+
ポイント
+
キャンペーン
といった施策につながる可能性があります。
ここで重要なのは、決済端末や決済手段そのものよりも、その決済がどんなサービスにつながっているかです。
この構造は、さいたま市だけの話ではありません。
決済サービスの競争を考えるとき、最近は「どのブランドに対応しているか」「手数料はいくらか」だけでは見えない部分が増えています。
例えば、
決済
↓
ポイント
↓
クーポン
↓
金融
↓
店舗サービス
↓
移動
というように、決済の周辺にさまざまなサービスが接続されています。
これは、いわゆる「経済圏」をつくる動きとも重なります。
ただし、自治体が関わる地域キャッシュレスには、民間の経済圏とは違う特徴があります。
民間企業の場合、基本的には自社サービスの利用拡大や顧客接点の獲得が大きな目的になります。
一方、自治体には、
地域経済の活性化
行政サービスの効率化
市民との接点づくり
地域内消費の促進
といった別の目的があります。
だからこそ、
自治体 × 決済 × 地域事業者
という組み合わせには、民間の決済サービスとは違う可能性があります。
さいたま市みんなのアプリは、さいたま市と地元の経済団体・企業が出資して設立された株式会社つなぐが運営しています。行政だけでも、民間企業だけでもない形で地域のデジタル基盤をつくっている点も特徴です。
そして今回、そこにLUUPという移動サービスが加わった。
この動きは、地域アプリが単なる「行政情報を見るアプリ」から、地域の生活導線そのものに入っていくためのプラットフォームへ変わっていることを示しているように見えます。
キャッシュレス化という言葉を聞くと、
「現金がスマホに置き換わる」
というイメージを持ちやすい。
でも、さいコインの仕組みを見ていると、それだけではありません。
行政給付に使う。
地域活動への参加にポイントを付与する。
地域の店舗で使ってもらう。
クーポンと組み合わせる。
そして今回のように、移動サービスともつなげる。
こうして見ると、キャッシュレスは「支払いをデジタルにする技術」から、地域の人やお金の流れをつなぐインフラへと役割を広げています。
そして、「つながる」ことには、もう一つ大きな意味があります。
それは、これまで店舗と接点のなかった人に、店を知ってもらうきっかけが生まれることです。
例えば、LUUPを使うために地域アプリを利用した人が、そこでクーポンを見つける。
そのクーポンをきっかけに、今まで行ったことのなかった店舗を訪れる。
そこで初めて、その店の商品やサービスを知る。
こうした流れが生まれれば、決済や地域アプリは、単に「支払いを便利にするもの」ではなく、新しい顧客接点を生み出す入口にもなります。
もちろん、だからといって、すべての店舗が同じ決済手段を導入すればいいわけではありません。
店舗の規模や客層、商圏、扱う商品、導入コスト、決済手数料などによって、必要な決済環境は変わります。
大切なのは、「キャッシュレスに対応すること」そのものを目的にしないことです。
どんなお客さんに来てほしいのか。
今、どんなお客さんが来ているのか。
地域のどんなサービスとつながると、新しい接点が生まれるのか。
そうした状況を見ながら、その時々に合った決済手段を選んでいく。
最初からすべてを導入する必要はありません。
まず一つの決済から始め、利用状況を見ながら対応する決済を増やす。必要になれば、POSや店舗管理、販促などのサービスともつなげていく。
決済は「導入して終わり」ではなく、店舗とお客さんの接点を少しずつ広げていくための手段にもなります。
今回のさいたま市とLUUPの連携も、地域のキャッシュレス化を一気に完成させるものではありません。
決済を起点に、移動、買い物、行政サービスなどを少しずつつないでいく取り組みです。
だからこそ、これからのキャッシュレス化では、「どの決済が一番優れているか」だけを見るのではなく、「自分の店舗や地域にとって、どのつながりが新しい価値を生むのか」を考えることが大切になっていくのではないでしょうか。
お客さんや店舗の状況に合わせて、必要な決済手段を選ぶ。
その選択によって、これまでなかったつながりが生まれる。
キャッシュレス化の一歩は、単に「支払えるようにすること」ではなく、新しい顧客との接点をつくる一歩にもなり得るのだと思います。
段階を踏んで決済手段について考える際の1つの指標になる切り分け方については、こちらにわかりやすく記載されております。
ぜひ自分の店舗に置き換えて検討する際の参考にしてみてください。
#070 決済端末は本当に「いらない」のか — スマホで足りる店、足りない店
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