「決済手数料0円」。
店舗を経営する側からすれば、かなり魅力的な言葉です。
決済するたびにかかるコストがなくなるなら、それに越したことはありません。
でも、ふと考えてみると少し不思議です。
決済には、決済端末や通信、システム、セキュリティ、決済ネットワークなど、さまざまな仕組みが関わっています。
それなのに、なぜ「0円」にできるのでしょうか。
今回は、特定のサービスを評価するのではなく、「無料」という言葉の裏側にある決済のビジネスモデルを少し覗いてみます。
まず押さえておきたいのが、「決済手数料0円」と「決済に一切お金がかからない」は同じではないということです。
例えば、無料になるのが特定の決済手段だけだったり、一定期間だけだったり、一定の条件を満たした場合だけだったりします。
実際に、現在も新規加盟店向けに一定期間の決済手数料を0円にするキャンペーンなどがあります。
たとえばイオンでは、AEON Payの新規加盟店を対象に、条件を満たす場合に最大2年間、決済手数料を0円とするキャンペーンを案内しています。
つまり、「0円」という数字だけを見るのではなく、
何が、いつまで、どの条件で0円なのか。
ここを見る必要があります。
では、そもそも決済にはどんなお金がかかっているのでしょうか。
クレジットカード決済を例にすると、店舗、アクワイアラー、国際ブランド、カード発行会社など、複数のプレイヤーが関わっています。
店舗が支払う加盟店手数料も、そのまま一つの会社の利益になるわけではありません。
経済産業省の資料では、加盟店手数料の中からインターチェンジフィーやブランドフィー、決済インフラにかかる費用など、さまざまなコストが発生する構造が示されています。
公正取引委員会の調査でも、加盟店手数料の配分について、インターチェンジフィーが大きな割合を占めることが示されています。
つまり、私たちがレジで「ピッ」とする数秒の裏側には、意外と多くのプレイヤーとコストが存在しています。
ここが一番気になるところです。
決済にコストがかかるのであれば、なぜ手数料を0円にできるのでしょうか。
理由は一つではありません。
例えば、新しい店舗を獲得するためのキャンペーンとして、一時的に手数料を無料にする方法があります。
また、特定の決済手段だけを無料にするという設計もあります。
さらに、決済そのものではなく、周辺サービスを含めて事業を成立させる方法もあります。
決済を入口に、
決済
↓
POS
↓
店舗管理
↓
金融サービス
↓
その他の店舗向けサービス
と、提供するサービスを広げていく考え方です。
ここで重要なのは、
決済会社にとって、決済1回ごとの手数料だけが収益ではない
ということです。
店舗との継続的な接点を持つこと自体に価値がある。
そう考えると、「決済手数料0円」という価格設定も、単純な値下げではなく、店舗との接点をつくるための一つの戦略として見ることができます。
では、店舗側は何を見ればいいのでしょうか。
もちろん決済手数料は重要です。
ただ、それだけでは判断できません。
例えば、
なども確認する必要があります。
つまり、
「0円だから安い」ではなく、「自分の店舗に必要なものが、どんな条件で提供されるのか」
を見ることが大切です。
「決済手数料0円」という言葉だけを見ると、単純な価格競争に見えます。
でも、その裏側を見ると、決済業界はもっと複雑です。
決済には多くのプレイヤーが関わり、それぞれにコストがあります。
そのうえで、決済事業者は決済そのものだけでなく、POSや店舗管理、金融サービスなど、さまざまなサービスを組み合わせながらビジネスを成立させています。
だから、面白いのは「無料なのか?」という問いだけではありません。
「なぜ無料にできるのか?」
と考えてみることです。
「決済手数料0円」という一つの数字を入口にすると、普段は見えない決済の仕組みや、決済会社が店舗とどのような関係を築こうとしているのかまで見えてきます。
決済サービスを選ぶときも、価格だけを見るのではなく、そのサービスがどんな仕組みで成り立っているのかまで見てみる。
そうすると、いつもの「ピッ」という数秒が、少し違って見えてくるかもしれません。