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#076 決済端末の歴史。決済端末は、なぜ「カードを読む機械」ではなくなったのか?

#076 決済端末の歴史。決済端末は、なぜ「カードを読む機械」ではなくなったのか?

 

CAT端末からスマートフォンまで。決済端末の歴史から、店舗との接点がどう変わったのかを読み解く

 

はじめに

 

FinGo新人営業のK子です。

前回は、キャッシュレス決済の歴史について調べながら、記事を書きました。

クレジットカード、Suica、PayPay。

それぞれ違う時代に登場した決済手段が、古いものを完全に置き換えるのではなく、少しずつ積み重なって今のキャッシュレスにつながっていることが分かりました。

調べていく中で、新たに気になることが出てきました。

増え続けてきた決済手段を、店舗ではどうやって受け止めてきたのでしょうか?

そこで今回は、歴史シリーズ第2弾として、「決済端末の歴史」を調べてみます。まだ書く前ですが、なかなか手ごわそうです。

今では、クレジットカードを差し込んだり、タッチしたり、QRコードを読み取ったりと、いろいろな決済に対応している決済端末。

でも、最初から何でもできたわけではありません。

かつて決済端末は、どんな役割を担っていたのか。

そこから、なぜICカードや電子マネー、QRコード、POS連携、クラウドへと対応するようになったのか。

さらに最近では、スマートフォンそのものを決済端末として使うこともできます。

こうして歴史を追ってみると、決済端末は単に「高機能な機械」になったのではなく、増え続ける決済手段と店舗をつなぐ役割そのものが広がってきたことが見えてきます。

今回は、そんな決済端末の変化をたどりながら、

「決済端末は、なぜ『カードを読む機械』ではなくなったのか?」

を考えていきます。

 


目次

  1. 1980年代|「カードを承認する」ためにCAT端末が生まれた
  2. 1990年代|CATからCCTへ。「共同利用」の時代へ
  3. 2000年代|IC・電子マネーで「読む方法」が増える
  4. 2010年代|決済端末がPOSやクラウドにつながり始める
  5. 2010年代後半|QRコード決済が「端末」の役割を広げる
  6. セキュリティも決済端末を変えた
  7. 2020年代|スマートフォンそのものが決済端末になる
  8. 決済端末の歴史から見えてくること

1.1980年代|「カードを承認する」ためにCAT端末が生まれた

日本の現在につながる決済端末の歴史を考えるなら、1980年代は重要な時期です。

1981年には、銀行系クレジットカード会社6社によって、クレジットカードの磁気ストライプ共通仕様である「JIS II型」が制定されました。

そして1984年には、NTTデータが日本最大級のキャッシュレス決済総合プラットフォームCAFISを開始。同じ年、全国信販協会と銀行系カード会社がCAT(Credit Authorization Terminal)端末の共同設置を始めています。

ここで重要なのは、CAT端末だけを見ないことです。

当時の店舗にとって必要だったのは、「カードを読む機械」そのものではありません。

カードを読み取り、その情報を決済ネットワークにつなぎ、カード会社側で信用照会を行い、決済を成立させることでした。

つまり、

店舗

↓

CAT端末

↓

決済ネットワーク

↓

カード会社

という仕組みです。

現在のCAFISは、カード会社だけでなく、金融機関、PSP、加盟店などをつなぐ決済プラットフォームとして機能しています。

1984年の開始以来、決済を支えるネットワークとして役割を広げてきました。

ここから見えてくるのは、決済端末が最初から「単独で動く機械」ではなかったということです。

決済端末は、店舗と決済インフラをつなぐ入口として生まれた。

この性格は、40年以上経った現在でも大きくは変わっていません。


2.1990年代|CATからCCTへ。「共同利用」の時代へ

1990年代に入ると、決済端末を取り巻く構造も変わっていきます。

1995年には日本カードネットワークがCARDNETを開始し、翌1996年にはJET-STANDARDサービスを開始しています。

ここで登場するのがCCTです。

CATがCAFISを経由してカード発行会社に信用照会する仕組みなのに対し、CCTは情報処理センターを経由して複数のカード会社などの決済を扱う共同利用型の端末として発展しました。

この変化は、店舗から見ればかなり大きな意味を持ちます。

決済会社ごとに専用の機械を置くのではなく、

一つの端末から複数の決済サービスにつなぐ。

端末を「特定の会社専用の機械」から、「複数の決済を受け付けるための共通インターフェース」へ近づけていったわけです。

この考え方は、その後の決済端末にも引き継がれていきます。

なぜなら、店舗にとっては決済サービスが増えるほど、端末も増やしたいわけではないからです。


3.2000年代|IC・電子マネーで「読む方法」が増える

2000年代に入ると、決済端末に求められる仕事が一気に増えていきます。

クレジットカードだけを考えていた時代から、

  • 磁気カード
  • ICカード
  • デビットカード
  • 非接触IC
  • 電子マネー
  • 海外カード

など、さまざまな決済を扱う必要が出てきました。

例えばNTTデータのINFOXは1999年にサービスを開始し、その後、2002年にICクレジット・ICデビット、2004年に非接触ICカード決済などへ対応を広げています。2005年には銀聯にも対応しました。

2004年に発表されたPiTaPa対応では、1台のINFOX端末でクレジットカード、J-Debit、マイクロペイメントなど複数のサービスを扱えることが示されています。

2006年には、新型INFOX端末が電子マネーや非接触ICなどにも対応しました。

ここで端末の役割が変わります。

それまでの端末は、

カードを読み、信用照会する

ことが中心でした。

ところが2000年代には、

いろいろな決済手段を、1台で受け付ける

ことが求められるようになります。

これは、端末の性能が上がったという話だけではありません。

決済手段が増えた結果、店舗側でそれを受け止める仕組みも変わる必要があった。

ということです。

前回の記事では、日本のキャッシュレスが「置き換わる」のではなく、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などが積み重なってきたことを見ました。

決済端末の歴史は、その裏側の話でもあります。

増え続ける決済手段を、店舗側でどう受け止めるか。

その答えの一つが、マルチ決済対応の端末でした。


4.2010年代|決済端末がPOSやクラウドにつながり始める

2010年代になると、決済端末はさらに変わっていきます。

2010年にNTTデータと東芝テックが発表した「CT-4100」は、4.3型カラー液晶とタッチパネルを搭載し、ICクレジット、J-Debit、銀聯などに対応。POSとの接続も想定されていました。

ここで、決済端末は単なる「読み取り機」から、店舗スタッフが決済業務を操作するインターフェースへ近づいていきます。

そして、もう一つ重要なのがPOSとの連携です。

POSは、商品や売上など店舗の情報を管理するシステム。

決済端末は、決済を受け付けるためのシステム。

もともとは別々の役割でした。

しかし店舗側からすれば、

「売上はPOS」

「支払いは決済端末」

と完全に分かれているより、両者が連携していたほうが業務はシンプルです。

例えば、POSで会計金額を確定すると、その金額が決済端末に連携される。

決済が完了すると、その結果がPOSに戻る。

こうした連携が進めば、スタッフが同じ金額を何度も入力する必要もなくなります。

決済端末は、単独で便利になるのではなく、店舗システムの一部として便利になる方向へ進んでいったわけです。

 


5.2010年代後半|QRコード決済が「端末」の役割を広げる

そして2018年頃から、決済端末を取り巻く環境がもう一段変わります。

QRコード決済の普及です。

QRコード決済は、クレジットカードや電子マネーとは違う方法で店舗に決済を導入できる点が特徴でした。

ここで面白いのは、新しい決済手段が増えたからといって、店舗に新しい機械を一つずつ置いていく方向には必ずしも進まなかったことです。

例えばNTTデータは2018年、既存の決済端末やインターフェースから複数のコード決済を扱える仕組みを発表しました。

さらに2019年には、JR西日本グループのショッピングセンター約3,000店舗へのCAFIS Arch導入において、クレジットカード、交通系電子マネー、複数のコード決済などを1台で扱える構成が採用されています。

つまり、

決済手段が増える

↓

端末も増える

ではなく、

決済手段が増える

↓

端末側が対応する

という方向に進んできたのです。

これは決済端末の歴史を見るうえで、かなり重要なポイントです。

端末の価値は、

「何を読み取れるか」

だけではなく、

「どれだけ多くの決済を、店舗が無理なく扱えるか」

へ広がっていきました。


6.セキュリティも決済端末を変えた

ここまで見ると、決済端末の進化は「便利になった歴史」に見えます。

しかし、もう一つ大きな理由があります。

セキュリティです。

クレジットカードの不正利用対策を背景に、加盟店側でもカード情報を適切に管理することが求められるようになりました。

改正割賦販売法では、加盟店におけるカード情報の非保持化、またはPCI DSS準拠(クレジットカード会員データを安全に取り扱うために定められた、クレジット業界における国際的なセキュリティ基準)などが求められ、対面取引ではIC対応などのセキュリティ対策も進められました。

つまり、決済端末には、

「決済できればいい」

だけではなく、

「安全に決済できる」

ことも求められるようになったわけです。

現在の決済端末では、カード情報をそのまま店舗のPOSなどに残さない仕組みや、暗号化、トークナイゼーションなど、端末の裏側にあるセキュリティ技術も重要になっています。

ここでも、端末単体では話が完結しません。

端末、POS、決済センター、クラウド、ネットワーク。

それぞれが役割を分担しながら、安全に決済を処理する仕組みが作られています。

決済端末は、「カードを読む場所」であると同時に、「決済情報を安全に扱うための入口」にもなったのです。


7.2020年代|スマートフォンそのものが決済端末になる

そして現在、決済端末の歴史を見るうえで面白いところまで来ました。

2024年5月、Appleは日本で「iPhoneのタッチ決済」を開始しました。

対応するiPhoneとパートナーのiOSアプリがあれば、追加の決済端末を用意することなく、非接触のクレジットカードやデビットカード、Apple Payなどを受け付けられます。

これは、決済端末の歴史を振り返るとかなり大きな変化です。

これまでなら、

専用端末

↓

決済ネットワーク

という構成が基本でした。

それが、

スマートフォン

+

決済アプリ

+

決済プラットフォーム

という構成でも決済受付ができるようになった。

つまり、専用のハードウェアそのものが「決済端末」である必要がなくなってきたわけです。

もちろん、これは「専用端末が不要になった」という意味ではありません。

iPhoneのタッチ決済が対応するのは、非接触のクレジットカードやデビットカード、Apple Payなどであり、2024年の日本での開始時点では電子マネーには対応していませんでした。

店舗によって必要な決済手段も、POS連携の有無も、設置環境も違います。

だから現在は、

専用の決済端末

と

スマートフォン・タブレットを使った決済

が競合するというより、店舗の規模や業態、必要な機能に応じて選択肢が増えている、と見るほうが実態に近いでしょう。


8.決済端末の歴史から見えてくること

ここまでの歴史を並べてみると、決済端末はこんなふうに変わってきました。

この変化を一言でまとめるなら、

決済端末は「カードを読む機械」から、「店舗と決済インフラをつなぐ接点」へ変わってきた。

ということだと思います。


決済端末の競争は「スペック競争」だけではない

決済端末というと、

  • 画面が大きい
  • 処理が速い
  • 小型・軽量
  • タッチ決済に対応
  • QRコードに対応

といった機能に目が向きます。

もちろん、これらは重要です。

ただ、歴史を振り返ると、それだけではありません。

決済端末が担う役割が広がるにつれて、店舗にとって重要なのは、

どんな決済に対応できるか

だけではなく、

POSとどうつながるか

売上をどう管理するか

入金や精算をどう扱うか

セキュリティをどう確保するか

店舗スタッフがどれだけ簡単に使えるか

といった部分にも広がっています。

つまり、端末そのもののスペックだけではなく、

その端末を中心に、店舗の決済業務全体がどうつながるのか

が重要になってきたわけです。


「端末がなくなる」のではなく、「端末の形が増えている」

スマートフォンが決済端末になると、

「専用の決済端末はなくなるのでは?」

という話になりがちです。

ただ、歴史を見ると少し違う景色が見えてきます。

決済端末は、これまで何度も姿を変えてきました。

CATからCCTへ。

単機能からマルチ決済へ。

スタンドアロンからPOS連携へ。

専用センターからクラウドへ。

そして専用ハードウェアからスマートフォンへ。

そのたびに「以前のものが全部なくなった」というわけではありません。

店舗に必要な機能に応じて、新しい選択肢が増えてきたのです。

小規模店舗ならスマートフォン型が合うかもしれない。

一方で、多数の決済手段やPOS連携、店舗オペレーションとの統合が必要な店舗では、専用端末のほうが扱いやすいケースもあります。

だから、これからの決済端末を考えるとき、

「どの端末が一番高機能か?」

だけを見る必要はありません。

むしろ、

「この店舗にとって、決済を受け付けるための最適な入口は何か?」

と考えることが重要になってきます。


おわりに

前回は、日本のキャッシュレスがなぜ「置き換わらなかった」のかを見ました。

クレジットカード、電子マネー、QRコード決済。

それぞれが違う課題を解決してきた結果、日本の決済手段は積み重なるように増えていきました。

そして今回は、その増え続ける決済手段を店舗側で受け止めてきた存在として、決済端末の歴史を見てきました。

最初はカードの信用照会をするための機械だったものが、

複数の決済を受け付けるようになり、

POSや店舗システムとつながり、

クラウドと連携し、

そして今ではスマートフォンそのものが決済端末になる。

決済端末の進化は、単なる機械の高性能化ではありません。

決済そのものが複雑になり、店舗と決済インフラの距離が近づいてきた歴史でもあります。

そして端末の画面の向こう側には、カード会社、アクワイアラー、決済ネットワーク、PSP、決済代行会社、端末メーカー、POS事業者など、多くのプレイヤーが存在しています。

「カードをタッチする」という数秒の動作の裏側に、これだけ多くの仕組みがある。

そう考えると、いつもレジ横に置いてあるあの小さな機械も、少し違って見えてきます。

次回は、その「端末の向こう側」にいるプレイヤーたちに目を向けてみようと思います。

なぜクレジットカードには、こんなに多くの会社が関わっているのか?

決済業界の面白い部分を深掘りしていきます。

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