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#048決済手数料は、誰に・何のために払っているのか — カード網とQR網、お金の流れを図解する

作成者: FinGo株式会社|2026/08/04

月末の入金明細。売上から「決済手数料」が引かれていることは、店を経営していれば誰でも知っています。ただ、その 3% 前後のお金がこの後どこへ流れ、誰の取り分になるのかを説明できる人は、決済業界の中でもそう多くありません。

手数料は「高い・安い」で語られがちです。しかし内訳が見えないまま率だけを比べるのは、内訳の見えない請求書に判を押すのと変わらない。本記事では、カード決済と QR コード決済それぞれについて、店が払った手数料がどう分配されるのかを図で追いかけます。構造が見えると、「何にお金を払っているのか」「どこは交渉や工夫の余地があるのか」の輪郭が変わって見えるはずです。

なお、決済に登場するプレーヤーの役割そのものは別記事「決済業界の仕組みを徹底解説」で、決済代行会社の機能は「決済代行業者とは?」で整理されています。本篇はその続き——お金の流れ編です。

カード決済:手数料の約 7 割は「カードを発行した会社」へ

クレジットカード決済で店が払う加盟店手数料は、大きく 3 つに分かれます。

カード決済の加盟店手数料の分配構造。約 7 割はイシュアへの IRF として流れる(出典:公正取引委員会・経済産業省公表資料より作成))

最大の塊が IRF(インターチェンジフィー)。アクワイアラ(加盟店管理会社)からイシュア(カード発行会社)へ支払われるもので、加盟店手数料の約 7 割を占めるとされます※1。カード会社がポイント還元や不正補償を回せるのは、この原資があるから。つまり店が払う手数料の大部分は、目の前の決済処理ではなく、カードを発行し会員を維持する側に流れています。

次がネットワーク処理料。カード会社と店の間で「このカードは使えるか」を照会し取引データを運ぶ決済ネットワークの利用料で、日本では NTT データの CAFIS が 1984 年からこの役割を担ってきた代表格です※2。規模感は取引 1 件あたり数円——2023 年の料金改定後は、2,000 円以下の取引で 0.15%(100 円決済なら 0.15 円)、それを超える取引で最大 3.15 円/件です※2。手数料全体から見れば、実は小さな部分です。

残りがアクワイアラの取り分。加盟店の審査・管理・入金というオペレーションのコストと利益がここに乗ります。

長く「ブラックボックス」だったこの構造は、2022 年 11 月に転機を迎えました。経産省・公取委の求めで、Visa・Mastercard・銀聯が日本での IRF 標準料率を公表したのです※1。業種やカードの種類で料率が変わることも、この公表で誰でも確認できるようになりました。

QR 決済:カード網を通らないのに、なぜ手数料は思ったほど安くならないのか

一方、QR コード決済の売上処理は、原則としてカードの決済ネットワークを経由しません。ウォレット事業者が自前のシステムで残高を動かし、後日まとめて加盟店(または決済代行経由)に振り込む——構造だけ見れば「中抜きの少ない」流れです。

QR 決済の資金の流れ。カード網の処理料は原則掛からないが、還元キャンペーンやシステム自前運用のコストが手数料に乗る(出典:各社公表情報より作成)

それなら手数料は安くなりそうなものですが、実際の公表料率は PayPay で 1.98%(月額制の優遇プラン加入で 1.60%・いずれも税別)※3——カードと比べて劇的に安いわけではありません。

理由は、コストの中身が別物だからです。カード網の処理料が消えた代わりに、QR 事業者は①大型ポイント還元の原資、②決済システムの自前構築・運用、③大規模な加盟店網の開拓と管理——これらを全部自分で抱える。店が払う手数料は、カード決済では「発行側の会員維持」に、QR 決済では「ウォレット側のシェア獲得競争とシステム」に、それぞれ形を変えて流れているわけです。

「どちらの網を通るか」で、同じ 2〜3% でも中身がまったく違う。これが図解から見える一番の事実です。

構造が見えると、何が変わるか

内訳を知っても、IRF を店が値切ることはできません。それでも見え方は 3 つ変わります。

まず、交渉のしどころが見える。手数料のうち IRF は公表制の「相場」で、アクワイアラの取り分こそが個別に決まる部分——つまり見積もりを比べる意味があるのは主にそこです※1。

次に、「安い率」の裏が読める。原価を割り込むような低率には、多くの場合どこかに回収の仕組みがあります。入金サイクルが長い、月額が別に乗る、特定ブランドしか使えない——率の数字だけで飛びつく前に、構造ごと見る癖がつきます。

最後に、契約の形を考える材料になる。ブランドごとに個別契約を重ねると、手数料率はそれぞれでも、入金日・明細・窓口がバラバラに増えていく。決済手段を 1 台の端末に集約し、契約と入金の管理をまとめる形にすれば、率そのものは変わらなくても管理コストの側の軽減につながります。FinGo の PT-10 も、複数の決済手段を 1 台に集約し、契約・入金をまとめやすくする設計です。手数料の「率」と「構造」を分けて考えたい方は、端末側の整理から相談いただくのが早道です。

カード網と QR 網、コスト構造の対比

よくある質問

Q1. IRF が公表されたなら、手数料は下がったのですか。

公表の狙いは、加盟店とアクワイアラの交渉材料を増やし、アクワイアラ間の競争を促すことです※1。自動的に率が下がる制度ではありませんが、「手数料のうち動かせる部分はどこか」が見えるようになった意味は小さくありません。

Q2. QR 決済はカード網を全く使わないのですか。

売上処理は原則として各社の自前システムですが、チャージや口座連携など周辺の処理で既存の決済インフラが使われる場面はあります。「カード網とは別の道が主流」という理解が実態に近いところです。

Q3. 結局、店として何から手を付ければいいですか。

いま契約している決済手段ごとに、率・入金サイクル・月額・窓口を一覧にするところからです。率は構造上動かしにくくても、契約と管理の形はいつでも見直せます。端末と契約の整理を含めた相談は FinGo でも受け付けています。

まとめ — 手数料は「率」ではなく「構造」で見る

決済手数料の大部分は、カードなら発行側の会員維持へ、QR ならウォレット側の陣取りとシステムへ——店の外の、それぞれ別の経済圏に流れています。それを知った上で率を見るのと、知らずに見るのとでは、見積もりの読み方も契約の選び方も変わります。

明細の「手数料」の行は、読めない請求書ではありません。構造さえ分かれば、読める。この記事がその一枚目の図になれば幸いです。

出典