2025/10/28
QRコード決済の影で…電子マネーの現在地と今後の展望
近年、キャッシュレス決済は急速に多様化し、私たちの消費生活に深く浸透しています。特にQRコード決済の台頭は目覚ましく、多くのキャンペーンと共に利用者を拡大してきました。その一方で、かつてキャッシュレス決済の主役であった「電子マネー」は、その立ち位置を少しずつ変化させています。
本記事では、決済端末の導入を検討されている事業者様に向けて、最新のデータを基に電子マネーの利用実態と今後の展望について、QRコード決済との比較を交えながら詳しく解説します。
QRコード決済の台頭と電子マネーの縮小傾向
経済産業省が発表した2024年のデータによると、日本のキャッシュレス決済比率は**42.8%**に達し、政府目標であった4割を前倒しで達成しました。この成長を牽引しているのがQRコード決済です。
キャッシュレス決済の内訳を見ると、クレジットカードが依然として8割以上のシェアを占める一方、QRコード決済は9.6%(13.5兆円)となり、2022年には電子マネーのシェアを上回り、クレジットカードに次ぐ第2の決済手段へと成長しました 。
決済手段 | 2024年シェア | 決済額 |
クレジットカード | 82.9% | 116.9兆円 |
QRコード決済 | 9.6% | 13.5兆円 |
電子マネー | 4.4% | 6.2兆円 |
デビットカード | 3.1% | 4.4兆円 |
この背景には、QRコード決済が持つ導入の手軽さがあります。専用端末が必須となる電子マネーとは異なり、QRコード決済は店舗側がQRコードを提示するだけで導入できるため、小規模な店舗や個人経営の店でも広く普及しました。また、利用者側にとっても、大規模なポイント還元キャンペーンが利用を後押ししました。
結果として、MMD研究所の調査では、直近1ヶ月で利用した決済方法としてQRコード決済(47.0%)が非接触型電子マネー(34.7%)を上回る結果となっています 。
交通系ICを中心に根強い需要、しかし大きな地域差
市場シェアではQRコード決済に後れを取る電子マネーですが、その需要が完全になくなったわけではありません。特に、交通系ICカード(Suica、PASMOなど) を中心に、その利便性から根強い人気を誇っています。
キャッシュレス推進協議会の調査によると、1回あたりの平均利用金額は、クレジットカードが約5,000円、QRコード決済が約1,600円であるのに対し、電子マネーは約1,000円と、少額決済の領域で強みを発揮しています 。スピーディーな決済が求められるコンビニエンスストアや自動販売機、そして何より公共交通機関での利用は、電子マネーの重要な役割であり続けています。
しかし、電子マネーの利用率には顕著な地域差が存在します。2020年の調査では、電子マネーの利用率が最も高いのは首都圏の都県であり、特に交通網が発達している地域で利用が集中していることが分かります 。
**電子マネー利用率ランキング(偏差値)
1. 千葉県(72.2)
2. 東京都(70.4)
3. 神奈川県(70.3)
これは、交通系ICカードの普及度合いが地域によって大きく異なるためです。首都圏では多くの人が通勤・通学で交通系ICカードを日常的に利用しており、それがそのまま買い物での決済利用にも繋がっています。一方で、車社会が中心の地方ではその恩恵を受けにくく、利用率が伸び悩む一因となっています。
電子マネー導入のハードル:「電子マネー検定」という壁
電子マネーの普及を語る上で見逃せないのが、電子マネー検定という独自の運用基準の存在です。電子マネー決済を導入する際、事業者は決済端末が各電子マネー事業者の定める技術基準や運用基準を満たしているかを確認するための検定を受ける必要があります。
この検定プロセスは複雑で、申請書類の準備から実機テスト、各種調整まで、専門的な知識と多くの時間を要します。特に、複数の電子マネーブランド(Suica、WAON、nanacoなど)に対応しようとすると、それぞれに対して検定を通過する必要があり、事業者にとって大きな負担となっています。
こうした複雑な手続きが、電子マネー導入のハードルを高め、結果として普及のスピードに影響を与えている側面は否めません。QRコード決済が急速に広がった背景には、こうした煩雑な手続きが不要であったことも一因として挙げられます。
FinGoでは、こうした複雑な電子マネー検定の手続きをお客様に代わって対応するサービスを提供しています。 専門知識を持つスタッフが申請から検定通過までを一貫してサポートすることで、事業者様は本業に集中しながら、スムーズに電子マネー決済を導入することが可能です。
今後の展望:決済手段の「棲み分け」が進む
今後、キャッシュレス決済市場はどのように変化していくのでしょうか。専門家は、各決済手段の特性に応じた「棲み分け」がさらに進むと予測しています。
• 高額決済:引き続きクレジットカードが中心的な役割を担う。
• 中額決済:ポイント還元やキャンペーンで強みを持つQRコード決済がシェアを拡大。
• 少額・スピーディーな決済:交通系ICカードを中心に電子マネーが一定の需要を維持。
電子マネーがQRコード決済に完全に取って代わられるというよりは、それぞれの得意な領域で共存していくと考えられます。特に、改札でのタッチ&ゴーのように、1秒を争う場面での電子マネーの決済スピードは、QRコード決済にはない大きなアドバンテージです。
事業者様にとっては、ご自身の店舗の顧客層や単価、オペレーションなどを考慮し、最適な決済手段を組み合わせることが重要になります。例えば、
• 単価の高い飲食店や小売店:クレジットカードは必須。
• 若者やファミリー層が多い店舗:QRコード決済を導入することで、キャンペーンをフックとした集客が期待できる。
• 駅前やコンビニなど、スピーディーな会計が求められる店舗:電子マネー(特に交通系)への対応は顧客満足度向上に繋がる。
まとめ
QRコード決済の急速な普及により、電子マネーの市場シェアは縮小傾向にあります。しかし、交通系ICカードを中心とした少額決済の領域では、その利便性とスピードから依然として根強い需要があります。
一方で、その利用率は首都圏に集中しており、地域による差が大きいのが現状です。今後のキャッシュレス市場は、各決済手段の強みを活かした「棲み分け」が進んでいくと予想されます。
決済端末を導入する際には、こうした市場全体のトレンドと、ご自身のビジネスの特性の両方を踏まえ、顧客にとって最も利便性の高い決済環境を整えることが、売上向上と機会損失防止の鍵となります。
FinGoのキャッシュレス決済ソリューション
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また、クレジットカード、QRコード決済に特化した店頭向け端末も新たにリリースいたします。これにより、店舗のニーズに合わせて柔軟に決済手段を選択いただけるようになりました。
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