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#077 決済インフラの歴史をたどる。クレジットカードはどうやって「つながる仕組み」になったのか?
FinGo新人営業のK子です。
ここまで歴史シリーズとして、2本の記事を書いてきました。
第1弾では、クレジットカード、Suica、PayPayなど、日本のキャッシュレスがなぜ「置き換わる」のではなく増えてきたのかを追いました。
第2弾では、増え続ける決済手段を店舗側で受け止めてきた、決済端末の歴史をたどりました。
決済手段が増えれば、それを受け付ける端末も変わる。
では、そのさらに先には何があるのでしょうか。
例えば、店舗でクレジットカードをタッチすると、ほんの数秒で「決済できました」と表示されます。
でも、その数秒の間に動いているのは、決済端末だけではありません。
カードを発行する会社があり、店舗と契約する会社があり、国際ブランドがあり、決済ネットワークがあり、場合によってはPSPなどの事業者も関わります。
なぜ、1回の決済にこれほど多くの会社が関わっているのでしょうか?
今回は歴史シリーズ第3弾として、普段は見えにくい「決済インフラの歴史」をたどります。
目次
- クレジットカードは、最初から巨大なネットワークだったわけではない
- 「他社のカードも使えるようにする」ためにネットワークが生まれた
- 日本では「つなぐためのインフラ」が整備された
- なぜ「カードを発行する会社」と「店舗と契約する会社」が分かれているのか
- 1回の決済で動いている「情報」と「お金」
- 店舗が支払う決済手数料は、どこへ行くのか
- 決済インフラは、カード決済だけのものではなくなった
- 決済インフラの歴史から見えてくること
1. クレジットカードは、最初から巨大なネットワークだったわけではない
現在のクレジットカードを見ると、どこのお店でも同じように使えることが当たり前になっています。
Visa、Mastercard、JCBなどのカードを持っていれば、対応している店舗で支払える。
消費者から見ると、それだけの話に見えます。
しかし、クレジットカードが登場した当初から、現在のような巨大なネットワークが完成していたわけではありません。
日本では1950年代からクレジットカード事業が始まり、1961年には現在のJCBにつながる日本クレジットビューローが設立されました。
当時のカード決済は、今のような巨大なネットワークを前提としたものではありません。
カードを発行する会社と、そのカードを利用できる店舗との関係を、どうやって成立させるか。
まずはそこから始まりました。
つまり、クレジットカードの歴史をたどると、最初から「決済ネットワーク」があったわけではなく、カードを使える場所をどう増やしていくかという課題から、徐々に仕組みが複雑になっていったことが分かります。
2. 「他社のカードも使えるようにする」ためにネットワークが生まれた
クレジットカードが広がると、当然ながら新しい問題が出てきます。
例えば、A社がカードを発行しているとします。
A社のカードを、A社と契約している店舗だけでしか使えなかったらどうでしょうか。
消費者にとっては不便です。
一方、店舗側からすると、カード会社が増えるたびに個別に契約し、個別に接続しなければなりません。
カード会社が10社あれば10社、100社あれば100社と接続する。
カード会社や加盟店が増えるほど、すべてを個別につなぐ方法には限界が出てきます。
そこで必要になったのが、決済ネットワークです。
VisaやMastercardなどの国際ブランドは、加盟店とカード発行会社をつなぐためのルールやネットワークを整備し、異なる会社同士でもカード決済を成立させられる仕組みを広げていきました。
Visaでは1970年代に電子的な承認・決済処理の基盤が整備され、Mastercardも1960年代から銀行間で利用できるカードネットワークの構築を進めています。
ここで重要なのは、カードそのものの機能ではありません。
「違う会社が発行したカードでも、同じ仕組みの中で使えるようにする」
ということです。
カードの普及が進むほど、カードそのものだけでなく、それを支えるネットワークの重要性も高まっていきました。
3. 日本では「つなぐためのインフラ」が整備された
日本でも、カード会社が増え、利用店舗が増えていくにつれて、個別接続では対応しにくくなっていきました。
そこで1984年に登場したのが、NTTデータのCAFISです。
CAFISは、カード会社や金融機関、加盟店などをつなぐ決済ネットワークとして発展してきました。
現在ではクレジットカードだけでなく、デビット、電子マネー、コード決済など、さまざまな決済に関わる処理を支えています。
CAFISが登場した意味を単純化すると、
「それぞれがバラバラに接続するのではなく、共通のネットワークを介してつなぐ」
という考え方です。
これによって、決済を受け付ける側の負担を抑えながら、より多くのカードを受け入れられるようになります。
同様に、日本では1995年に日本カードネットワーク(CARDNET)が設立され、1996年には共同利用型のCCT端末・サービスが登場しました。
第2弾の「決済端末の歴史」で見たCCTも、実はこうした決済インフラを共有するという発想と深く関係しています。
決済端末だけを見ていると、単に「新しい機械が登場した」という話に見えます。
しかし、その裏側には「どうやって複数の決済会社を効率よくつなぐか」というインフラ側の課題がありました。
4. なぜ「カードを発行する会社」と「店舗と契約する会社」が分かれているのか
ここで、決済に関わる会社を整理してみます。
クレジットカード決済では、大きく分けると、
- イシュアー
- 消費者にカードを発行する会社
- アクワイアラー
- 店舗側と加盟店契約を結び、カード決済を受け付ける側
- 国際ブランド
- VisaやMastercardなど、決済のルールやネットワークを提供する
- 決済ネットワーク
- 決済情報をやり取りするためのネットワーク
- PSP・決済代行会社
- 加盟店の決済処理や複数の決済手段への対応などを支援する事業者
などが関係します。
もちろん、実際のビジネスでは1社が複数の役割を担うケースもあります。
そのため、「カード会社は必ずこの役割」と単純に分けられるわけではありません。
それでも、この役割分担を見ると、なぜ多くの会社が関わるのかが少し見えてきます。
消費者側には、
「カードを持つ」
という接点があります。
一方、店舗側には、
「カード決済を受け付ける」
という別の接点があります。
さらに、その間には決済ネットワークがあります。
つまり、クレジットカード決済は、
消費者と店舗を1社だけでつなぐ仕組みではなく、それぞれの役割を分担することで巨大な決済市場を支えてきた
と考えることができます。
5. 1回の決済で動いている「情報」と「お金」
では、実際に店舗でカードをタッチしたとき、何が起きているのでしょうか。
コンビニで1,000円分の商品を購入した場合を例にして、決済承認までを図に表すと以下のようになります。
ただし、ここで面白いのが、
「決済情報が流れること」と「実際にお金が移動すること」は同じではない
という点です。
決済では、承認、売上処理、精算、入金など、複数の処理が関係します。
つまり、店舗でカードをタッチした一瞬の裏側では、情報とお金がそれぞれ別の処理を経ながら最終的な決済にたどり着いているわけです。
決済が便利になるほど、利用者がその裏側を意識する場面は少なくなります。
普段は見えないからこそ、決済インフラの存在を意識する機会もほとんどありません。
6. 店舗が支払う決済手数料は、どこへ行くのか
ここまで仕組みを見てくると、次に気になるのが「お金」です。
店舗がカード決済を利用すると、一般的には加盟店手数料を負担します。
では、その手数料はすべて1社の利益になるのでしょうか。
そうとは限りません。
クレジットカード決済では、例えばインターチェンジフィーという仕組みがあります。
これは、一般的な国際ブランドの4者間モデルでは、アクワイアラーからイシュアーに支払われる手数料です。
イシュアーは、カードの発行や利用者へのサービス、不正利用対策などを担っています。
一方、アクワイアラーは店舗側との契約や決済受け入れに関わります。
さらに、国際ブランドのネットワーク利用や、決済処理、システム運用などにもコストが発生します。
そのため、
「店舗が支払う加盟店手数料=そのまま決済会社の利益」
と考えるのは正確ではありません。
実際の手数料構造は契約形態やサービスによって異なりますが、複数のプレイヤーがそれぞれの役割を担い、そのコストや対価が決済全体の中に組み込まれています。
ここまで見ると、なぜ決済業界にこれほど多くの会社が存在するのかも分かってきます。
決済そのものが、一つの会社だけで完結するサービスではないからです。
7. 決済インフラは、カード決済だけのものではなくなった
決済インフラの歴史は、カードだけの歴史でもありません。
ECが普及すれば、インターネット上で安全にカード情報を処理する仕組みが必要になります。
不正利用が増えれば、本人認証や不正検知の仕組みが必要になります。
カード情報をより安全に扱うためには、トークン化などの技術も必要になります。
さらに、店舗側ではPOSとの連携や、クラウドを使った売上管理なども求められるようになりました。
つまり、決済インフラは、
「カードの決済情報を運ぶだけのネットワーク」
から、
「決済を安全かつ効率的に成立させるための基盤」
へと役割を広げています。
最近ではAPIを使ったサービス連携も増えています。
のように、決済を起点として周辺サービスまでつながっていく構造です。
これは、第1弾で見た「決済手段の多様化」、第2弾で見た「決済端末の多機能化」ともつながっています。
決済手段が増える。
↓
それを受け付ける端末が必要になる。
↓
端末を決済インフラにつなぐ必要がある。
↓
さらにPOSやクラウドなど、店舗の他のシステムともつながっていく。
こうして決済は、単なる「支払いの方法」から、店舗を支えるシステムの一部へと広がってきました。
8. 決済インフラの歴史から見えてくること
ここまで3回にわたって、決済の歴史を見てきました。
第1弾では、
「なぜ日本のキャッシュレスは、置き換わるのではなく増えてきたのか?」
を考えました。
クレジットカード、電子マネー、QRコード決済。
それぞれが異なる課題を解決するために登場し、既存の決済手段を完全に消すのではなく、役割を分けながら共存してきました。
第2弾では、
「増え続ける決済手段を、店舗はどう受け止めてきたのか?」
を決済端末の歴史から見ました。
CATからCCT、IC、電子マネー、QRコード、POS連携、そしてスマートフォンへ。
決済端末は、単にカードを読む機械から、さまざまな決済と店舗をつなぐ接点へと変化しています。
そして今回見てきたのが、そのさらに裏側です。
「そもそも、その決済を成立させているのは誰なのか?」
という問題です。
カードを発行する会社。
店舗と契約する会社。
国際ブランド。
決済ネットワーク。
PSPや決済代行会社。
そして、その先にはPOSや金融サービスなど、さらに多くのシステムや事業者がつながっています。
一見すると、ずいぶん複雑です。
でも、この複雑さには理由があります。
決済が広がるにつれて、
「一社ですべてをやる」よりも、「それぞれが得意な役割を担い、それをネットワークでつなぐ」
ほうが、大きな市場を支えやすくなったからです。
そして、この構造は今も変化しています。
決済手段が増えれば、必要なインフラも増える。
店舗が求める機能が増えれば、端末やPOSとの連携も広がる。
さらに決済データを活用した金融サービスや店舗DXまで含めれば、決済を中心としたエコシステムはさらに広がっていくでしょう。
決済端末を見ているだけでは、ただの「機械」に見えます。
決済方法だけを見ていれば、「クレカ」「電子マネー」「QR」といったサービスの違いに目が向きます。
でも、その裏側には、それぞれをつなぐインフラがあります。
そして、そのインフラがあるからこそ、私たちは店舗でカードをタッチするだけで、数秒後には決済を終えられる。
そう考えると、普段何気なく使っている「決済」は、かなり大規模な仕組みの上に成り立っていることが分かります。
まとめ
今回の歴史シリーズ第3弾では、クレジットカードを中心に決済インフラの歴史をたどりました。
ポイントを整理すると、
- クレジットカードは、最初から巨大なネットワークだったわけではない
- カードの普及とともに、異なる会社をつなぐネットワークが必要になった
- 日本ではCAFISやCARDNETなどの決済インフラが整備された
- イシュアー、アクワイアラー、国際ブランド、PSPなどが役割を分担している
- 1回の決済では「情報の流れ」と「お金の流れ」がある
- 加盟店手数料の背景には、複数のプレイヤーとコスト構造がある
- 決済インフラは、カード処理だけでなくPOSやクラウド、セキュリティ、APIなどへ広がっている
第1弾では決済手段。
第2弾では決済端末。
そして第3弾では決済インフラ。
この3つを並べてみると、
決済手段 → 決済端末 → 決済インフラ
という、それぞれのレイヤーがつながっていることが見えてきます。
普段は一瞬で終わる決済ですが、その一瞬を成立させるために、多くの仕組みが動いています。
その仕組みがあるからこそ、私たちはカードをタッチするだけで買い物ができる。
そう考えると、決済というのは「お金を払う」という行為以上に、人と店舗と金融インフラをつなぐ仕組みなのだと思います。