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#062決済端末の「認証」は一つではない — 端末に付く認証と、組み合わせに付く電子マネー検定

#062決済端末の「認証」は一つではない — 端末に付く認証と、組み合わせに付く電子マネー検定

決済端末のカタログを開くと、「PCI PTS 認定取得」「EMV 認証済み」「電子マネー対応」といった言葉が並んでいます。どれも「認証済み」のように読めますが、これらは別々の団体が、別々の目的で出しているものです。

このカタログを読む機会は、この秋に増えます。国際ブランドのルール改定により 2026 年 10 月 1 日からはすべてのカード決済端末に非接触決済(タッチ決済)機能の搭載が求められ、対応していない端末は 9 月 30 日で利用終了※1。カード会社から加盟店へ、その案内が届き始めています。端末の入れ替えを検討する事業者が一斉に増える時期に、「認証済み」という言葉の中身を知っているかどうかで、端末の選び方は変わってくるでしょう。

本稿では、一台の決済端末が持っている認証と検定を一枚の地図として整理します。電子マネー検定そのものの仕組みは#017、取得にかかる期間は#024で扱っていますので、本稿は「認証全体の中で電子マネー検定がどこにあり、他の認証と何が違うのか」に絞ります。

「認証済み端末」は、何を指しているのか

一台の決済端末が日本の店頭でカードや電子マネーを受けられるようになるまでには、性質の異なる複数の関門を通ります。ここではそれを「認証地図」と呼ぶことにしましょう。一列に並んだ関門ではなく、守る領域も管轄も別々のもの、という意味での「地図」です。

大きく分けると、層は四つあります。

表 1 決済端末の認証地図

表の一番上、PCI PTS は暗証番号を盗まれないための安全基準で、四つの中では土台にあたります。2006 年に American Express・Discover・JCB・Mastercard・Visa の 5 社が設立した PCI SSC が定めており、対象は端末という「装置」そのものです※2。。

二つ目の EMV レベル 1・レベル 2 は、IC カードとの通信と処理が規格どおりかを確認します。ここまでは「カードを安全に、正しく読めるか」という土台の話。ブランドは、まだ出てきません。

三つ目の国際ブランド認定で、はじめて Visa なら Visa、JCB なら JCB の取引が実際に通るかが確認されます。そして四つ目が、電子マネー検定。Suica や iD、WAON といった電子マネーごとに、その事業者が定めた仕様どおりに端末が動作し画面や音が適切に出るかを確認する、いわば動作が仕様に合っているかを見る検定です。

この四つの外側には、性質の違うものがもう一つ、割賦販売法という法律があります。2018 年 6 月施行の改正割賦販売法でカード情報を扱う加盟店にはセキュリティ対策が法的に義務づけられ、その具体的な内容はクレジットカード・セキュリティガイドラインが定めています※3。割賦販売法は「法律」、上の四つは「民間の規格・ルール」。この区別は押さえておきたいところです。

なお、海外製の端末が日本の店頭で使えるようになるまでにこの四つの層を一からたどることになる事情は、別記事で扱っています。

「端末に付く認証」と、「組み合わせに付く検定」

表 1 の一番右の列、「何に付くか」。ここがこの記事の要点です。

カード側の三つ、つまり PCI PTS・EMV・国際ブランド認定は、端末という機械そのものに付く認証です。端末メーカーがその機種で取得すれば、その端末を POS レジにつないでも自販機の制御基板と組み合わせても、認証の取り直しは発生しない。カードの読み取り・暗号処理・ブランドごとの取引処理は端末の中で完結しているので、レジや制御部の側に何をつなぐかは認証の対象外だからです。

電子マネー検定は、ここが違います。#017で触れた「上位機+決済端末」の単位という話を、カード側の認証と並べると輪郭がはっきりします。私たちが検定代行の実務で扱っている限り、電子マネー検定は端末単体にではなく、「端末の機種」「対応する電子マネーのブランド」「有人・無人といった運用形態」の三つの組み合わせごとに取得するもの。検定で見られるのが端末だけではなく、端末と上位機(レジや自販機の制御部)を含めたシステム全体としての動作と表示だからです。FinGo の検定代行も、「システム単位」で認定を取得する形をとっています※4。

同じ端末でも、有人レジ向けに取った構成を無人機に載せ替えれば、運用形態が変わるので取り直し。つなぐ上位機が変わっても、対応する電子マネーのブランドを増やしても、その組み合わせについて新たに取得します。一方で、接続先のアクワイアラーを変えたり、端末側の設定画面のようなファームウェアを更新したりしても、取り直しは不要。決済アプリの変更でも、画面遷移・表示・伝票の様式に関わるものだけが、差分の検定の対象になります。カード側の認証が「一度取れば、上位機をどう組み合わせても済む」のに対し、電子マネー検定は「組み合わせごとに発生する」ものだと言えます。

この違いを知らないと、計画が狂います。「端末は認証済みだから、うちのシステムにつなげばそのまま電子マネーも使える」という前提は、電子マネーについては成り立ちません。

この違いが、工程として現れる場面

端末を買って使う側なら、カード側の三つは端末メーカーが取ってきたものをそのまま使えばよく、そこから先で何かをする必要はありません。

違いが表に出るのは、端末を自社のシステムや機器に組み込むとき。POS レジと連携させる、自販機メーカーが自社の制御基板に端末を載せる、有人向けの構成を無人機に転用する。こうした場面では、カード側の認証は端末メーカーが取ってきたものをそのまま使えますが、電子マネーについては自社の上位機との組み合わせで検定が新たに発生します。組み込み開発の計画にこの工程を入れていないと、端末は届いたのに電子マネーだけ使えない期間、つまり工程表にない空白が生まれます。取得にどれくらいかかるかは#024で整理したとおりで、ブランドによっては数か月単位。

つまり、四つの層のうち三つは端末と一緒に手に入るもので、最後の一つだけは組み込む側が自ら踏む工程です。電子マネー検定が独立した仕事として存在し、代行という形のサービスが成り立っているのは、この一層だけが組み合わせに付いているからです。

端末メーカーとして

FinGo は決済端末のメーカーとして、電子マネー検定の取得代行と、クレジットカードのブランドテスト(EMV レベル 3、表 1 の国際ブランド認定にあたります)の支援を提供しています※4。端末メーカーとして、この地図の四つの層と日々向き合っています。

組み合わせごとに発生する電子マネー検定は、端末を組み込む側にとって見えにくい工程でしょう。上位機との組み合わせで検定がどう発生するか、計画のどこに置けばよいかが気になるときは、認証地図を一緒に読める相手にご相談ください。

出典

※1 ライフカード「非接触決済(タッチ決済)未対応端末のご利用終了について」(2026 年 3 月・カード会社から加盟店向けの案内) https://www.lifecard.co.jp/info/260309.html

※2 ペイメントナビ「PCI PTS POI 認定取得の概要」(PCI SSC の設立経緯・目的) https://paymentnavi.com/paymentnews/103217.html

※3 ペイメントナビ「セキュリティ対策がクレジットカード加盟店の法的義務に 6 月 1 日に改正割賦販売法が施行へ」(2018 年 5 月 21 日) https://paymentnavi.com/paymentnews/74356.html

※4 FinGo「ブランド検定」(電子マネーブランド検定=システム単位での認定取得 / クレジットカードブランドテスト EMV L3) https://www.fingo.co.jp/certification

※参考 システムアンサー「割賦販売法・クレジットカード・セキュリティガイドラインと PCI DSS の関係」(ガイドラインの位置づけ) https://system-answer.com/column/83/

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